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東京五輪エンブレム問題から学ぶ、トラブルにならないロゴの作り方

デザイン

いま話題になっているロゴ関連のトピックスと言えば「東京オリンピック・パラリンピックエンブレムの酷似問題」です。

いいことでデザインが話題になるのはロゴを作っているデザイナーとしてもありがたいのですが、このような話題でロゴデザインが注目されてしまうと、発注者側も無関心ではいられません。

そこで今回は東京五輪エンブレム問題がなぜここまで大きな問題になってしまったのかを考え、失敗からトラブルにならないロゴの作り方について考えていきたいと思います。

東京五輪エンブレムはなにが問題だったのか?

このコラムはロゴ制作に関するものなので、あくまで今回のニュースはエンブレム問題に限定して論じていきます。ですが今回の問題がここまで大きくなってしまったのはエンブレムの形状が酷似しているという問題だけでなく、エンブレムをデザインした佐野研二郎氏が他の仕事で盗用を認めた問題やデザイン業界、広告業界の利権の問題などが絡み合ったことが原因のひとつでもります。

このあたりのことについてはネット上ではさまざまな方が意見を述べており、その中でも佐野氏の母校で本人も教鞭をとっている多摩美術大学の学生の方が書かれた「多摩美統合デザイン学科の学生として思うこと」が、わかりやすく整理して書かれているので、ご興味のある方はぜひご一読ください。

少なくとも今回の問題は「佐野氏のあの仕事が盗作だったから、東京オリンピックエンブレムも盗作だろう」というように感情任せで議論されるべきではありません。以下、エンブレム問題に絞って考えていきましょう。

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(画像引用元:http://www.news72.jp/2020tokyo/52104271.html)

デザイナーとそうでない方で意見が大きく異なるエンブレム問題の捉えかた

今回のエンブレム問題の特徴の1つは、デザイナーやデザインのことを理解している人と、そうでない一般の方とでは大きく意見が違うところです。つまりデザイナー側の見方はあれだけシンプルな幾何学とフォントをモチーフにロゴを作れば「何かしらのロゴに似てしまってもしょうがない」という意見が多いのに対し、一方デザイナーではない方の意見としては「問題のベルギーのロゴにそっくりだからパクりだ」や「他にも盗用問題もあったし東京オリンピックエンブレムもパクりなのでは?」という感情的な意見が多いように感じます。

デザイナーでもある筆者の個人的な意見としては、あのエンブレムをパクりとしてしまうと、皆さんもよく目にするトイレのピクトグラムなど「同じモチーフを使ったデザイン」は、すべてパクりになってしまうことになります。したがって、今回のエンブレムはデザインコンセプトが異なるためパクりにはならないと思っています。

しかしベルギーのロゴと今回の東京オリンピックエンブレムが似ているか?と聞かれると似ていると思います。ここにこそ今回の問題の本質があるように感じています。

オリンピックエンブレムが他のロゴと似ていてもいいのか?

今回のエンブレムは、企業のものでもなければブランドのロゴでもありません。2020年東京五輪・パラリンピックを象徴するものであり、日本を象徴するロゴということになります。

こうしたコンセプトである以上「パクり/パクりじゃない」という次元の問題ではなく、日本で開催されるオリンピックを象徴するエンブレムが、先に存在した他のロゴに似ていていいのか?という問題になります。

つまり問題の本質は「デザインコンセプトがちがう」とか「シンプルなロゴだから似たものがあっても仕方がない」という話とは別の次元の話になります。佐野氏の反論会見のようにデザイン的な説明に終始されても納得できない人が大勢いらっしゃるのではないでしょうか。

世界中には似ているロゴはいくらでもある

現在は佐野氏に集中砲火が浴びせられているような状態ですが、「【完全に一致】世界中に似てるロゴめっちゃあった」というまとめ記事を見てもわかるように、似ているロゴというのは探せばいくらでもあるというのが実際のところです。

それぞれのロゴがパクりかどうかの真偽はわかりませんが、ロゴ制作の進め方として「このようなロゴを作って欲しい」と参考になるロゴをクライアントから提示されることもあれば、制作側も、同じ業界や業種のロゴのリサーチなども行って制作していきます。逆にいうと何のロゴにも似ていないロゴを作るということは非常に難しいことになりますし、またどのロゴにも似ていないロゴがオリジナリティーの高いロゴと評価される可能性がある一方で、何のロゴがよくわからないという酷評を受けることもあり得ます。

ロゴはシンボリックなものですから、誰が見ても「あれは○○を象徴したものだ」とわからなければなりませんし、奇抜で見たことのないようなロゴを作ったからいいというものではありません。

トラブルにならないロゴの作り方

今回のオリンピックエンブレムは日本のもの、日本国民のもの、もしくは世界のオリンピックですから世界中の人のもの、とも言えるかもしれません。一方でロゴはクライアントの企業やブランドのものです。

ですから当然ですが、クライアントから「これはパクりじゃないか!」と言われるようなロゴは作ってはいけませんし、クライアントが知らなくても今回の問題のようにどこかから「パクりだ!」と言われるものになっていないかしっかりと下調べして制作することが大切です。

ロゴデザインは0から生まれるものではありません。多くのロゴを参考に研究したりリサーチしたうえで、そこからさらにクライアントの希望に沿ったものに昇華するという作業を怠らないようにすれば、似ているロゴがあったとしても大きな問題になることはないでしょう。またそうした作業を通してこそオリジナリティーのあるロゴをデザインできるのではないでしょうか。

まとめ

今回は、現在話題になっているロゴのトピックスから、トラブルにならないロゴの作り方について考えてみました。

 とても難しい問題ですし、デザイナーの中でも今回の件で改めてデザイナーやデザインを行うことについて考えた方も多いかもしれません。

 しかしこれも1つのデザインに対して考えるいい機会になったと考えるべきですし、また発注する方も過剰に神経質になる必要もありません。あくまで「いいロゴを作る!」という思いで発注側と受注側がしっかりとコミュニケーションしていけば、そこで制作されるロゴは素晴らしいものになるでしょう。

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