有名企業やブランドのロゴがリニューアルされると、ユーザー間で大きな話題となります。
最近では、サイバーエージェントのロゴを「A BATHING APE」で知られるデザイナーNIGO氏が手がけたことがニュースにとり上げられていました。
【サイバーエージェントがロゴ刷新 デザイナーNIGO氏が手がける】
またアートディレクターの佐藤可士和氏も多くのロゴのリニューアルを手がけており、どのロゴも話題になっていました。
【ユニクロ、楽天、Tポイントカードも!身近なあのロゴは佐藤可士和氏のデザイン!】
このように企業やブランドにとってロゴのリニューアルは一大ニュースであり、新たな事業の方向性や戦略、体制など、企業自体が新しいスタートを切る証としてロゴを刷新するケースが目立ちます。それゆえ新しいロゴは多くの人が注目するトピックになるわけです。
しかしこのようなロゴのリニューアルは全てが成功するわけではありません。今回はロゴのリニューアルで配慮しなければならない点を有名企業の失敗例から学んでいきましょう。
新しいロゴが受け入れられづらい理由
まず最初にロゴリニューアル自体に対する世の中の反応を見ると、新しいロゴがすんなりと受け入れられているケースよりも、ネガティブな反応を起こすケースのほうが多いかもしれません。その大きな理由は、ロゴはそれほど頻繁に変更されるものではないため、慣れ親しんだロゴが変わってしまうとユーザーはどうしても違和感を感じてしまうためです。
ですから多くの場合「前のロゴの方が良かった」という声が少なからず出るわけですが、そんな新しいロゴにも時間が経てば慣れていくものです。「前のロゴってどんなものだっけ?」というようになれば、新しいロゴがユーザー間にしっかり定着したということでしょう。
しかしこうしたロゴのリニューアルの中には、明らかに企業やブランドイメージと異なるようなロゴや、デザイン的にも評判の悪いロゴがあり、結局元のロゴに戻ったりもう一度リニューアルすることになった「失敗ロゴ」があります。
それでは、次は具体的な有名企業の「失敗ロゴ」を見ていきましょう。
【Gap】ロゴリニューアルの失敗事例
(▼リニューアル前のロゴ)
(▼リニューアル後のロゴ)
ロゴリニューアルの失敗例で挙げられることが多いのが、Gapのロゴです。Gapは1969年に設立され、その歴史の半分以上に相当する20年以上も従来のブランドロゴを使用し続けてきました。しかし突然Webサイトで新しいロゴを公開したのですが、その新しいロゴはユーザー間で評判の悪いものでした。
その後、Gapは「自分たちは新しいロゴを気に入っている」とした上で、そのあまりにも評判の悪い意見の多さから、他のデザインの提案やアイデアも見てみたいとし、クラウドソーシングでロゴの公募を行います。
しかしこれも逆効果で「新しいロゴを定着させる気はないのか!」とユーザーの反発を受けることになりました。結局Gapは従来のロゴを維持することになったのです。
さすがにここまでのゴタゴタはよくあることではありませんが、ロゴリニューアルは行う企業側がしっかりとコンセプトや思いを持って行い、新しいロゴを定着させるという意志が必要なことがわかります。
その証拠にGapの幻となった新ロゴは従来のセリフフォントでクラシックなイメージとは異なり、サンセリフフォントを用いたカジュアルな印象で作られていました。デザイン的にもキーカラーのブルーもワンポイントで使用し、時代にあった良いリニューアルであったのかもしれません。そのためこのロゴがGapの新しい顔として定着していた可能性はあるのですが、運営者がユーザーの批判的な意見に耳を傾けすぎ、定着させようという意志が及ばなかったため、従来のロゴに戻ってしまったと考えることもできそうです。
【Kraft】ロゴリニューアルの失敗事例
(▼リニューアル前のロゴ)
(▼リニューアル後のロゴ)
アメリカのプロセスチーズの代名詞「クラフト」もロゴリニューアルの失敗を経験しています。
こちらはロゴ(企業)のコンセプト的な失敗例で、元のロゴはスッキリとしたインパクトのあるロゴですが、リニューアル後は多くの要素とカラーを使いすぎてしまい、ロゴが伝えるメッセージ性が不明確なものになってしまいました。現在は、オリジナルに近いスタイルのロゴに変更しています。
ロゴは企業のコンセプトやメッセージを象徴するものでなくてはならないので、それが不明確なものでロゴとして成立しづらいということでしょう。
【Animal Planet】ロゴリニューアルの失敗事例
(▼リニューアル前のロゴ)
(▼リニューアル後のロゴ)
アニマルプラネットは動物に関連する番組を提供するケーブルテレビのチャンネルです。こちらのロゴはリニューアルをして、わかりずらいものになってしまいました。
従来のロゴは、ゾウのシルエットが特徴的で可読性の高いロゴでしたが、新しいものはランダムな配置のタイポグラフィー型のロゴになりました。特に「M」の文字を横にしてしまったためロゴの可読性が悪くなり、バランスが崩れてしまいました。
しかしこちらのロゴは現在も使用されていますので、違和感はあっても定着させる意思が重要であることを示す例とも言えるかもしれません。
【STARBUCKS】ロゴリニューアル事例
(▼リニューアル前のロゴ)
(▼リニューアル後のロゴ)
(▼現在のロゴ)
最後にご紹介するのは、最初のロゴが失敗!?リニューアルして良かった、というスターバックスの例です。
スターバックスのロゴにはセイレーン(上半身が人間の女性で、下半身が鳥の姿の海の怪物)が用いられています。最初のロゴはこのモチーフが写実的に描かれており、このロゴのままだと日本でも至るところにあるコーヒーのチェーン店になれたのか疑問を感じてしまいますが、時代とともにシンプルかつシンボリックなものに変化していき、良いリニューアルがなされています。
ちなみにアメリカ・シアトルの1号店では初期のオリジナルロゴが、現在でも使用されています。
まとめ
さまざまなロゴリニューアルの失敗例を見きましたが、いかかでしたでしょうか。
これらの事例からわかることは、失敗ロゴには「コンセプト的な失敗」と「デザイン的な失敗」(もしくはその両方)があるということです。デザインのトレンドなどを意識しすぎるあまり、企業イメージに合わないロゴになってしまったのでは本末転倒ですが、スターバックスのロゴのように時代とともにロゴをアップデートしていくことも重要です。
ロゴが定着している企業であればあるほどそのリニューアルでは、発注側(企業)と制作側がしっかりとコミュニケーションを行い、これらの課題を解決するようなロゴを制作していかなければなりません。ロゴは企業レピュテーションに根源的に関わるものでもあるのです。