近頃は一人で会社を立ち上げ、5年後には従業員が1000人を超える企業に急成長!なんて話はゴロゴロ転がっています。そして会社を立ち上げる際に必要な様々なツール、そう、たとえばロゴデザインでさえ、クラウドサービスで比較的安価に気軽に手に入る時代です。しかし、ふと気づけば従業員も売上げも1000倍になった、事業内容も当初から比べて予想を超えて拡大していっている……。そうなれば企業理念やロゴデザイン、社名でさえも修正や刷新の必要に迫られることさえ多々あるでしょう。今回は成長のスピードの速いスタートアップやベンチャー企業とロゴの関係についてのお話です。
急成長のスクー、理念を変更してから1年をかけてロゴデザインを変更
Web業界で働くためのスキルや知識を学べる動画授業をオンライン上で提供するスタートアップのスクーが、2016年10月3日にコーポレートロゴとサービスロゴの変更を発表しました。
ロゴデザインの変更と共に社名を「株式会社schoo」(呼称:スクー)から「株式会社Schoo」に変更した同社は、2011年10月の創業以来、2015年まで「世の中から卒業を無くす」というビジョンを掲げて様々なオンライン授業を企画・制作。注目企業のCEOや各業界のキーマンを講師に招いた話題の授業をオンライン上の生放送(とその録画)で提供し、時に1枠の授業に4000人もの受講生が詰め掛ける(オンラインなので定員は無制限ですが…。笑)ほどの人気企画を送り出してきました。
サービス開始から4年を経て、24万人を超えるユーザーと1,300人を超える講師とのセッションの中で、「世の中から卒業を無くしたその先」にあるものが「人類の変革」であるという一つの結論を得たことで、2015年にビジョンの変更を、2016年にロゴデザインの変更に至ったといいます。
コンセプトをカタチにすることと“洗練されたカタチ”にすることの違い
さて、肝心のロゴですが、スクーは新旧ロゴデザインのコンセプトを次のように説明しています。
旧ロゴが6色を配置した「スクーを通じて様々な可能性を知る」ということを表現しているのに対して、新ロゴでは矢印がスクーユーザー一人ひとりを表し、それらが様々な方向を示しているということから、無限の可能性を持ち「自ら選択し能動的に学ぶことで人生が変わる」ということを表現しています。
デザインを担当したのは、優秀な若手デザイナーに与えられれるJAGDA新人賞をはじめ多くの受賞歴を持つ、日本デザインセンター「大黒デザイン研究室」のアートディレクターを務める大黒大悟氏です。
スタートアップ系の会社やベンチャー企業では、5年程度の短期間で、急激に事業の規模や領域を拡大するケースがままあります。またそれに伴い、スタート時の理念の修正や変更を必要とすることが多く、同時にロゴデザインを変更したりマイナーチェンジする機会も多くなるのです。
スクーの事例からは、旧ロゴから新ロゴへの変更が、「コンセプトをカタチにしたロゴ」から「コンセプトを洗練されたカタチにしたロゴ」への進化であることがとてもよくわかります。ディテールはまったく違うものになりましたが、そのコンセプトが旧コンセプトの延長線にあるという背景があるからでしょう、全体として「以前のものが変化した」「進化した」と思わせる共通感を残してのデザインの刷新はさすがです。
起業から数年以内に理念やロゴを見直すのはベンチャーにとっては常識!?
実は、スクーのように事業スタートから比較的短期間でロゴデザインをリデザインしてきたスタートアップは多々あります。その多くに共通するのが「シンプル&インパクト」という方向性です。実例を挙げて見てみましょう。
Twitterのトレードマークである鳥のロゴは、じつは画像を1ドルから購入できるオンライン画像・動画マーケットサイト『iStockphoto』で6ドル以下で購入されたものだったそうです。2012年に頭の羽毛をカット、バランスが整えられ、よりシンボリックなロゴデザインとなりました。
オンラインストレージサービスのドロップボックスのロゴは、3Dイラストの青ダンボールの下にDropboxの社名が入ったものだったのですが、2013年にシンプルなピクトグラムにリニューアルし、文字が無くなりロゴだけとなりました。
オンラインオークションサイトのeBayも17年間使っていたロゴデザインを2012年に変更しました。ポップなカラーは残し、天地が踊るように不揃いだった社名を一直線にして落ち着かせ、スラリとスマートなロゴスタイルとなりました。
世界中の空き部屋の持ち主と宿泊希望者のマッチングサイトを運営するAirbnb社は、2008年にAirBed & Breakfast社としてスタート。2009年には社名をAirbnbに変え、2014年にはロゴマークを変更しました。「Belo」と名づけられた新しいロゴデザインは、Airbnbが目指す“Belonging(帰属意識のようなもの)”の提供を象徴しているとのことです。
まとめ
ベンチャー企業やスタートアップの経営者の方は時折、創業時の経営理念や方針を振り返ってみて、大きな変更がないかを確認する機会を持つことをお勧めします。そしてもしそのズレを修正するためにロゴマークやロゴタイプの変更をする場合は、上記の「シンプル&インパクト」という流れを参考にされてはいかがでしょうか。
企業の成長に伴うロゴのリデザインはすでに常識化しているとはいえ、必ずしも成功するとは限りません。過去の記事でもご紹介したように、失敗例も数々ありますので、それらを踏まえて、どうか、大切に慎重になさってください。
【参考記事】